第2巻第1号 目次
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論文
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時系列モデル探索ソフトウェア:TMODEL 釘宮敏彰・永井武昭
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不等標本サイズの場合のTukeyの多重比較法:精密計算に基づくTukey−Kramer法の評価
吉田道弘
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潜在順序クラス分析 江島伸興・浅野長一郎
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Minkowski計量を用いた非対称類似性の距離表現について 佐藤義治
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2標本間題における不完全U−統計量 阪本雄二・白旗慎吾
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総合報告
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最近の平滑化法とその応用 田崎武信・財前政美・後藤昌司
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ソフトウェア記事
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臨床デ一タ入力システムMIDES 本川清徳・浅野比登志
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戦略情報システム構築支援ソフトウェアSTRACT 三木善徳・新井祥一・加藤博己
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JUSE−QCAS/MA1による多変量解析 片山清志・石川 茂
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パソコン通信教育用キットおよびパソコン通信ソフトウェア 東 幸男・幾井 左・村橋誠一
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生存時間データ解析ソフトウェアSD−BASEII 東阪知子・後藤文彦
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学会活動記事
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日本計算機統計学会第2回大会報告 石橋雄一・田崎武信
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第2回計算機統計学会シンポジウム報告 杉村正彦
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欧文誌掲載論文概要:J.Japanese Soc.Comp.Statist,1,1988 田中 豊
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読者の広場 水田正弘・岩谷きよみ・肥田英明・千野貞子
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執筆要項 編集委員会
ソフトウェア記事:募集要項 編集委員会
時系列モデル探索ソフトウェア:TMODEL
釘宮敏彰, 永井武昭:大分大学 工学部 組織工学科
〒870-11 大分市大字旦野原700番地 (Tel. 0975-69-3311)
時系列データの統計解析およびモデルあてはめを行うためには, 通常容量が大きくそして高速数値計算の可能な計算機が必要とされている(例えば, TIMSAC-78). 本稿では, 容量は小さいが, そのディスプレイ性能と操作性のよいパーソナル・コンピュータ(PC-9800)上で, ある程度の時系列解析に関する知識のあるユーザであれば, 好みのままにプログラムの修正ができる時系列解折用ソフトウェアTMODELの開発研究と, それに伴う二三の問題点について報告する. そして, このシステムによるカナダ山猫の捕獲頭数データ(Elton & Nicholson, 1942)の解析実施例を紹介する.
keyword {Time series model fitting, Prediction, ARMA-model, Pretreatments of time series data}
不等標本サイズの場合のTukeyの多重比較法:精密計算に基づくTukey−Kramer法の評価
吉田道弘:武田薬品工業(株) 企画開発本部
〒541 大阪市中央区道修町2-3-6 (Tel. 06-204-2271)
標本サイズが等しくない場合の多標本問題において, 等分散性の仮定のもとで, Tukeyの多重比較法について検討する. Tukey-Kramer法の精密法に対する効率を, 限界値と限界水準の両方の観点から, 数値的検討に基づいて評価する. 各標本間で標本サイズがかなり異なっているような状況では, Tukey-Kramer法は保守的になりすぎるため, 精密計算を行う必要が生じるが, 多くの応用の場面で生じるような, 若干の標本サイズの違いに対しては, Tukey-Kramer法は十分な精度をもった優れた近似法であることが確認された.
keyword{Critical value, Multivariate t-distribution, Pairwise multiple comparisons, P-value, Studentized range}
潜在順序クラス分析
江島伸興:九州東海大学 工学部 数学教室
〒862 熊本市大江町渡鹿223 (Tel. 096-382-1141)
浅野長一郎:九州大学 理学部 基礎情報学研究施設
〒812 福岡市東区箱崎6-10-1 (Tel. 092-641-1101)
本論文では, ある1個の潜在特性に基づいて順序付けされる潜在クラスの抽出問題を考察する. この問題は, すべての観測項目をある特定の特性の指標として潜在構造分析を行うときに考えられる. 従来では, 主として一般の潜在クラス分析の適用と推定結果の1次元的解釈の問題として, 潜在順序クラスの問題が考察されてきた. ここでは, 対象とする特性に基づいて, 潜在反応確率を1次元的に構造化し潜在順序クラス問題を議論する. したがって, 一般の潜在クラス分析のような探索的方法による潜在構造の解明ではなく, むしろ潜在特性分析のように完全に規定された構造モデルによる分析法を目的とする. その構造モデルとしてロジスティック・モデルを用い, かつそのパラメータの最尤推定アルゴリズムを構築する.
keyword{Latent class analysis, Latent ordered class analysis, EM algorithm, ML estimation}
Minkowski計量を用いた非対称類似性の距離表現について
佐藤義治:北海道大学 工学部 情報科学
〒060 札幌市北区北13条西8丁目 (Tel. 011-716-2111)
多次元尺度構成法において類似度が非対称である場合に, それらの類似度を規定する何らかの尺度を得るための第1段階として, 非対称性をもつ距離(計量)で非対称な類似性を表現することを試みた. そのために非対称性を許容する計量空間のモデルとしてMinkowski空間をとりあげる. とくに, 非対称性をもつ具体的な計量関数を2次元および3次元の場合について求め, それらの計量を用いて各個体をMinkowski空間に点として配置したとき, 個体間の距離が非対称性を保持しながら与えられた類似性をうまく表現する方法を考察した.
keyword{Multidimensional scaling, Distance representation, Asymmetric dissimilarities, Minkowski metric function, Ovaloid}
2標本間題における不完全U−統計量
阪本雄二:作陽短期大学
〒708 津山市八出 366 (Tel. 0868-24-1811)
白旗慎吾:大阪大学 教養部
〒560 豊中市待兼山町1-1 (Tel. 06-844-1151)
U-統計量は多くの重要な統計量を含む広いクラスをなし, その推定しようとしている母数の最小分散不偏推定量であり, 緩い条件のもとで漸近正規性が成立する. しかしながら, このように大きな長所をもつにもかかわらずU-続計量は実際の統計的推測では意外に使われていない. U-統計量の計算がきわめて大きな計算量を要求することがその一因である. 本論文では2標本問題において計算量が小さくかつU-統計量の良さをなるべく損わない不完全U-統計量を提案し, 応用上重要な四つの場合にその最適な形を導き, 完全U-統計量との効率を比較する.
keyword{Incomplete U-statistic, Efficiency, Optimality, Computation of U-statistic}
最近の平滑化法とその応用
田崎武信, 財前政美: 塩野義製薬(株) 解析センター研究所室
〒553 大阪市福島区鷺洲5-12-4 (Tel. 06-458-5861)
後藤昌司:塩野義製薬(株) 解析センター
〒564 吹田市泉町1-22-41 (Tel. 06-384-1171)
keyword{Smoothing, Computer-intensive method, PPR, GAM, ACE, GLM, LOWESS, Regression, Discrimination}
臨床デ一タ入力システムMIDES
本川清徳, 浅野比登志:(株)電通国際情報サービス
〒164 東京都中野区中野4-11-10 (Tel. 03-228-6155)
戦略情報システム構築支援ソフトウェアSTRACT
三木善徳:富士通(株) 関西システムラボラトリ
〒540 大阪市中央区城見2-2-6 (Tel. 06-949-3211)
新井祥一, 加藤博己:富士通(株) 沼津工場
〒410-03 静岡県沼津市宮本140番地 (Tel. 0559-23-2222)
ここ数年, 多くの企業において, コンピュータは単なる事務処理合理化のための道具から企業の戦略策定のための有効な道具として認識されつつある. そこでは, 企業内に収集・蓄積されたデータから有効な情報をタイムリに, かつ効率的にとり出せるようなシステムが必要になる. 戦略情報システム(SIS:Strategic Information System)はこのような背景の中で生まれた新しいコンピュータの利用形態として注目され始めている. STRACT(STRategic interACTive information system)は, ホスト・コンピュータのリレーショナル・データベースに蓄積されたデータに対して, 報告書やグラフを作成するプレゼンテーション機能および各種の統計解析や時系列予測などの解析機能を有するエンドユーザ・システムである. STRACTには, 企業規模や情報化のレベルに応じて最適な戦略情報システムを構築していくために役だつ多くの機能が用意されている. ここでは, STRACTの特徴と機能について, その概要を紹介する.
JUSE−QCAS/MA1による多変量解析
片山清志, 石川 茂:(株)日本科学技術研修所
〒151 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-30-3 (Tel. 03-479-6921)
ユーザが要求する解析目的に沿ったデータ解析に, 円滑に応答できるソフトウェアの必要性と関連し, JUSE-QCAS/MA1の機能を紹介する.
パソコン通信教育用キットおよびパソコン通信ソフトウェア
東 幸男, 幾井 左, 村橋誠一:(株)システムニシツウ
〒862 熊本市本荘町中の坪721 (Tel. 096-364-2420)
データの共同利用, 資源の活用, 時間的および空間的距離の解消を目的としてパソコン通信の利用がますます広範囲になってきている. このような需要に応えるためにパソコン通信教育用キットおよびパソコン通信ソフトウェアを開発した. パソコン通信教育用キットは, これからパソコン通信を勉強しようとしている人の入門版として利用できるように平易な解説に加えて多くの図形情報を処理している. また, パソコン通信ソフトウェアはマルチプル・パイパー方式を採用し双方向多重通信を可能としている.
生存時間データ解析ソフトウェアSD−BASEII
東阪知子, 後藤文彦:(株)MPC
〒101 東京都千代田区内神田1-9-12 小林ビル (Tel. 03-291-4537)
生存時間データ解析ソフトウェア"SD-BASE II"は生存時間研究における大規模な長期臨床試験で派生するデータの集積, およびそれらのデータの解析の支援を意図したパーソナル・コンピュータ用プログラムの集合である. ここでは本ソフトウェアの内容とその機能を紹介する.
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