生存時間解析において,比例ハザード・モデル(Cox, 1972)に基づくいくつかの接近法は癌などの難治疾患の予後因子を探索する代表的なツールとしての位置を占めている.ただし,治癒する可能性の高い疾患の生存時間データに,比例ハザード・モデルを直載にあてはめても,その結果は,実質科学の現実に照らしたときに,解釈に難をきたすか,あるいは実体との乖離を生むことが多い.このとき,治癒個体を考慮に入れたBoag(1949)のモデルを個体の共変量を組み入れた形式で拡張することが考えられる.本論文では,Boagの提案を比例ハザード・モデルの枠組みで拡張し,とくに,セミパラメトリック方式で検討した.この推測方式,EMアルゴリズムを介した近似法および生存時間関数の推定方法を提案した.数値検証ではこれらの妥当性,有用性が示唆され,事例検討では,新たな視点にたつ生産的知見が得られる可能性を示した.
Key words: Cure rate, Marginal likelihood, Partial likelihood, EM algorithm, Exact and approximate estimate
本論文では, 整数計画法(IP)を用いて,標本誤分類数 (率)を最小化する最適線形判別関数(IP-OLDF)を導出し, さらに,この定式化を少し変えることで,誤分類されたケースの判別境界点からの距離の和を最小化するLP線形判別法を開発した.
誤分類数を最小化する基準は,これまでの確率分布を前提に多くの成果を得てきた統計理論になじまない危惧がある.しかし,本手法では, 誤分類数が標本に対し一意に決まり,打ち切り基準を用いない変数増加法(上昇基本系列という事にする)で誤分類数は単調減少するという優れた特徴をもっている.さらに,本手法は正規分布のような特定の分布を仮定していないので,多くのダーティな現実データの判別に適していると期待できる.
これまで,フィッシャーのアイリスデータと医学データを用いて,これらをFisherの線形判別関数(線形判別関数)と2次判別関数とで比較評価を行った.
今回は,標本サイズ100の2変数の正規乱数データを4組作成した.うち2組を内部標本(G1,G2)とし,残り2組をそれらに対応する外部標本(G3,G4)とした.さらに,G1とG3群を0度,30度,45度,60度,90度回転させ,G2群とG4群は23組の整数値をこの2変数に加え平行移動した.この回転と平行移動の組み合わせで得られる115組(=5*23)の内部標本(G1,G2)に対して,IP-OLDF,LP線形判別関数,線形判別関数と2次判別関数を求め, 得られた判別式を外部標本(G3,G4) に適用しExternal Checkを行った.
これらの結果を,誤分類数としてまとめ,平均値の差の検定と回帰分析で各種判別手法の比較評価を行った.
誤分類数の平均値の大小順は,内部標本ではIP-OLDF, 2次判別関数,線形判別関数,LP線形判別関数の順に大きくなった.外部標本では,2次判別関数,IP-OLDF,線形判別関数,LP線形判別関数の順になった.平均値の差の検定から,外部標本のIP-OLDFと線形判別関数のみ差がないことが分かった.
相関係数は,いずれも0.967以上と高かった.医学データと異なり2次判別関数による誤分類数も,IP-OLDFで良く回帰できた.また各判別手法の誤分類数をIP-OLDFで回帰した回帰直線を比較しても,差の検定と同じ結果になった.
層別箱ひげ図で検討すると,回転の影響より,平行移動の影響が強いことが分かった.
以上から,IP-OLDFは現実のデータでも乱数データでも,従来の判別関数に劣らない結果を得た.LP線形判別関数は,計算時間が少ないことから,IP-OLDFを補完するものと期待したが,判別関数として利用するには不適切である事が分かった.
従来, 群逐次検定方式の研究は1変量正規応答または2値反応の群観測値をもとに, 2処置間の効果の差を逐次的に検定するための方式の開発が主な目的であった. 本研究は反応が2変量正規分布に従う群観測値をもとに, 2処置間の優劣を表す複合仮説に関する群逐次検定方式の考案が目的である. 初めに2処置間の優劣関係を表わす仮説を設定し, 尤度比検定法により, この群逐次検定での検定統計量を導出する. その検定統計量をもとに, 2変数関数に拡張した繰り返し信頼限界, 検出力を定義することによりこの群逐次検定方式を構築する. 最後にシミュレーションにより, 相関係数の値がこの繰り返し信頼限界と検出力にどのように影響されるかを考察する.
Key words: Repeated group significance test, Bivariate normal observations, Composite hypotheses, Likelihood ratio method1997年5月の評議員会において 本学会の将来計画策定を目的として将来計画委員会が組織され, 翌年の5月に委員会より出された最終答申において, 「インターネットを利用したオンラインシンポジウムの開催」が提案された. 本稿では, 企画に至る経緯のほか, 実施までの準備, 経過, およびその成果, 今後の可能性などについて報告する.
Key words: Computer Network, World Wide Web, Education on Statistics